佐藤さんは甘くないっ!
…………え!?
「い、いや、帰」
「佐藤さんのことだから連絡付かないとなったら柴先輩の家に行きそうですよね。ストーカーみたいに」
「そ、それは、」
「今は会いたくないんでしょう?だったら今夜は帰らない方が良いと思いますけど」
「~~~っり、り、律香にメールしてみる!」
「電源つけたら佐藤さんから何度も電話かかってくるんじゃないですか?ストーカーみたいに」
「…………」
わたしは画面が真っ暗なケータイを手に持ったまま暫し固まった。
ていうかストーカーみたいにってなんだ。
隠す気のない悪意に思わず笑ってしまいそうになる。
「僕は佐藤さんと違って襲ったりしません。とっても優しくしますよ」
にこやかに放たれた最後の発言がなんだか気になったけど、確かにここに泊めてもらった方が佐藤さんと接触しなくて済むのかもしれない…。
いやでも…部下の男の子の家に泊まるなんて…いやいや、やっぱり良くない。
「でも三神くんは部下だし、誰かに見られたら困る…」
「僕は柴先輩のお陰で就職することができました。だから恩返しがしたいなんて言ったら、重いですか?」
気付けば隣に座ってきた三神くんと真っ直ぐに視線が絡み合って息が詰まった。
憂いを帯びたような瞳がわたしを見据える。
恩返しなんて、勝手に助けただけなのに……そんな風に思ってくれてたの。
「はい、ということで決まりですねー」
にやりと勝ち誇った笑みを浮かべる三神くんはどこからどう見ても悪魔だった。