佐藤さんは甘くないっ!

「い、いただきます…!」


緊張したような表情は、まるで昨日のわたしを見ているようだった。

わたしも続いて手を合わせて箸を取る。

……味見はしたつもりだけど誰かに食べてもらうのはやっぱりどきどきする。


「美味しいっ…」


ぽつりと独り言のように漏れた言葉。

無意識だったのか、三神くんはハッとしたように顔を上げた。

思いっきり視線がぶつかり合う。


「い、いや、あの、とても美味しいです!ありがとうございます!」


昨日までは三神くんが主導権を握っていたのに、急に丁寧なお礼を言われると変な感じがしてしまう。

くすぐったくなってわたしも目を逸らす。

お味噌汁をすする音がやたらと大きく聞こえた。

三神くんは魚の食べ方がとてもきれいで、…恥ずかしながらわたしの方がちょっと残念だった。

ご飯粒を一粒も残さない姿勢はわたしと一緒。

きっとご両親が厳しくしつけたんだろうなぁ、と年寄じみたことを思っていた。

朝からご飯をよそい過ぎたかと心配していたけど三神くんはぺろっと完食してくれた。


「朝から贅沢でした。ごちそうさまです。本当にありがとうございました」

「えへへ、お粗末様でした」


昨日は許してもらえなかったけど、今朝は並んでキッチンに立って片付けをする。

わたしが食器を洗って、三神くんがそれを拭いて仕舞っていく。

結婚したらこんな風に過ごしたりするのかな、と誰に向けたのか解らないことを考えた。
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