佐藤さんは甘くないっ!
さて、片付けも終わってどうしようかと思っていると、三神くんがリビングの棚を眺めて何かを取り出した。
「ホラーとミステリーなら、ミステリー派ですか?」
「うん?」
「映画の話ですよ」
何本か引き出していた三神くんはソファに腰を下ろし、わたしを手招きした。
コーヒーとココアを持ってわたしも隣に座る。
昨日とはなんだか立場が逆転していて可笑しな感じがする。
わたしも気になっていたタイトルだったのでおとなしく映画鑑賞を始めた。
その後も連続で何本も映画を見て、たまに寝て、お菓子をつまんで、三神くんと穏やかな時間を過ごした。
気付けば肩に凭れ掛かって寝たりしたけど気にならなくなってきていた。
良いのか悪いのか、といえば多分悪い。
だけど現実逃避のような気持ちを引きずったままわたしは三神くんの優しさに甘えていた。
……甘えてばっかりだな、わたし。
確かに瞳にはテレビ画面が映っているけど、わたしはどこか遠くを眺めていた。
明日、佐藤さんに会うんだ。
ちゃんと話さなくちゃ。
佐藤さん忙しそうだけど時間作ってもらえるかな。
最上さんが絶対介入してこない仕事中じゃないと意味がない。
だけどずっとケータイの電源落としてて、それで仕事中に付き合ってくれるかな…。
考えれば考えるほど憂鬱になって、わたしは寝たふりでその感情を誤魔化した。
次に起きたら全部夢だったら良いのにな、なんて戯言を吐いた。