佐藤さんは甘くないっ!
……あれからもう二年も経ったんだなぁ。
ようやく終わりの兆しが見えてきた部長の尻拭い作業にほっと胸を撫で下ろす。
オフィスには気付けばわたししか残っていない。
いつかのデジャヴのようでくすりと笑ってしまった。
…わたしはあれから、少しは成長できたのかな。
佐藤さんは相変わらず厳しくて鬼のようでいつも殺されそうだけど。
でも決してわたしのことを諦めたりはしなかった。
どうせお前には無理だ、なんて決めつけるようなことも言わない。
だからわたしも絶対に自分から根を上げることはしないと固く決意していた。
カタカタカタ、カタン。
最後のキーを打ち終えて、ぐだっと背もたれに身体を預けた。
お、終わったぁぁぁ…!!!
今回ばかりは無理なんじゃないかと何度も思ったけど、本当に終わって良かった…。
さっそく印刷しようとプリンターの前に立ったところでコツンと革靴の音がオフィスに響いた。
「あれ、佐藤さん?」
全くどこまでデジャヴなんだろう。
無表情の佐藤さんがコツコツとわたしの方に歩み寄って来る。
「終わったか」
「はい、たった今」
「お前ならあと1時間は早められたはずだ」
「すみません、気を付けます」
部下への労いがないのはいつものことだ。
だけど“お前なら”って言葉が地味に嬉しくて、労い以上のものを感じる。
人間的に佐藤さんのことは嫌いだけど。
上司としてはどうだろう。
昨日律香にはああ言ったけど……意外と嫌いじゃないかも、しれない。