佐藤さんは甘くないっ!

三神くんの視線が突き刺さる。

解ってる、心配してくれているんだって、解ってるのに。

今のわたしは惨めすぎて誰にも見られたくない。


「ただ今ご紹介に預かりました、最上です。お久しぶりです。また皆さんにお会いできて嬉しいです。本日よりこのプロジェクトがスタートします。各部署からメンバーを引き抜いているので負担になるかと思いますが、どうぞご理解とご協力をよろしくお願いいたします」


不自然なくらい、凛とした声だった。

赤いルージュが何度も視界に入って網膜に焦げ付く。

そこから目を逸らそうとしたとき、不意に目が合った。

心臓がきつく締め上げられる。

わたしにしか解らない程度に最上さんが口角を上げて、目元だけで嗤って見せた。

……勝者の微笑、ということだろうか。

心に重たい鉛が落ちてきて、恋心なんてものを簡単に潰してしまった。


「……報告は以上です。それでは皆さん、業務に戻ってください」


それからの話は、何も頭に入ってこなかった。

解散の号令を受けてぞろぞろと人の波が流れる。

このまま漂っていたいような、今すぐ消えたいような、どうしようもない感情に襲われる。

どん、と誰かの身体がわたしにぶつかり、衝撃に耐えられずふらついた。


「…っ、柴先輩、大丈夫ですか」


今にも倒れそうなわたしの腕を掴んでくれたのは……やっぱり三神くんだった。
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