佐藤さんは甘くないっ!
本当は全部、不安も迷いもぶちまけてしまいたかった。
お酒と一緒に全てを流し込んでしまいたかった。
だけど、今は誰かと一緒にいたい気分じゃない。
「……今日は、すみません」
「そっかー残念。じゃあ三神くん、飲みに行こ!」
「…………はい?」
飛び火とはまさに。
デスクで仕事をしていた三神くんはバッと顔を上げてわたしの顔色を窺った。
行っておいでよ、わたしのことは気にしないで。
そんなこと言ったって無理なのは解ってるのに。
こんな死にそうな顔してたら、気にするなって言う方が酷だ。
自分が一番解っている。
「えっと……僕で良ければ、お願いします」
「一度ゆっくり話してみたかったんだよねーじゃあ柴ちゃん、お先!早く帰るんだよ」
「はい、お疲れ様です」
三神くんは半ば引きずられるようにして、宇佐野さんに連れられて行った。
その背中を見送って、力なく椅子に凭れ掛かる。
……こんなところで待っていたって、佐藤さんはやってこない。
なのに、万が一の僅かな期待がわたしの足をオフィスに縫い付けていた。
「……ばっかみたい」
そうは言ってもだらだら仕事をするのはポリシーに反する。
明らかにいつもより仕事の効率は下がっているので、諦めてPCの電源を落とした。
気付けばどんどん人が消えていき、わたしがオフィスを出たときにはあと2人ほどしかいなかった。