佐藤さんは甘くないっ!

「………はぁ」


結局、昨日は三神くんに謝れなかったな…。

起きたら化粧はそのまま、スーツは着たままで眠っていてびっくりした。

そもそも帰宅した頃の記憶がいまいちなかった。

お昼から実質何も食べていないのに、何故か今朝も空腹感がなかった。

一応シリアルを用意したけど、どうにも受け付けなくて結局ゼリー飲料になった。

頭はがんがんするし、胃は痛いし、もう満身創痍だ。

重たい身体を引きずって出社すると、オフィスはいつも通りだった。

昨日の騒がしさなんてもうどこにも残っていない。

コーヒーでも飲もうかと鞄を置いてから自販機コーナーに向かうと、事務職の女の子たちが甲高い声で話しているのが聞こえた。

佐藤さん、の名前が聞こえて思わず隠れてしまった。

ベンチに座りながら談笑している彼女たちにばれないよう、自販機の影に身を潜める。


「ねえ聞いた~?最上さん、アメリカ行く前は佐藤さんと付き合ってたって」

「まじでショックなんだけど!ムカつくけど最上さんには勝てないわー」

「しかも今日から二人で出張らしいよ~やばくない?」

「ずっと続いてたのかな?気まずさとか感じなかったよねー」

「佐藤さんが出張先で女抱くとか!やばい鼻血出る!抱かれたい!」

「妄想しすぎ!さすがにないでしょー」

「でも帰って来るの木曜だよー?二泊も!羨ましいなぁ」

「最上さん、佐藤さんと結婚するために帰ってきたとか聞いたよ~?」

「仕事はついでかよ!でも佐藤さんとの結婚があったら迷わず帰国するわー」

「あんたと結婚だけはありえませーん!」


……佐藤さんと最上さんが、出張?
< 208 / 291 >

この作品をシェア

pagetop