佐藤さんは甘くないっ!
「も、もう、キスで誤魔化さないでくださいっ……!」
「嘘吐きにはお仕置きしないとな」
やっとキスの雨が止んだかと思えば、相変わらずのドS発言に驚かされた。
歪んだ笑みを浮かべながら、佐藤さんの指でむにむにと唇をいじられる。
唾液で濡れた唇を触られることにやたらと羞恥心が煽られた。
「………さ、佐藤さんのことなんか、」
「大好きって顔してるけど?」
「~~~…っ!」
……佐藤さんは意地悪、だ。
返す言葉が見付からなくなり、ぐっと唇を結んで目を逸らした。
まだ最上さんとのことを何も説明されてないのにどうしてこんな幸せな気持ちなんだろう。
どうして嬉しくてしょうがないんだろう。
佐藤さんの言う通り、わたしはきっと大馬鹿だ。
恥ずかしさでいっぱいいっぱいになっていると、佐藤さんがわたしの頭を優しく撫でてくれた。
慈しむようなその手付きに心が穏やかになっていく。
「……俺の所為でたくさん傷付けてごめんな」
苦しそうに吐き出された言葉がわたしの胸に刺さった棘を溶かしてくれる。
あんなに聞くのが怖かったのに、今は早くその続きが聞きたい。
全部のわだかまりを失くしてからもう一度キスして欲しいなんて言ったらびっくりされるかな。
その謝罪に応えるように、佐藤さんの頬にそっと手を添えた。
鋭い目が見開かれてすぐに細められる。
その瞳には不安や迷いはなく、真っ直ぐにわたしを見据えていた。
「もう絶対に逃げないから……聞かせてください」
佐藤さんはもう一度キスをしてから、最上さんのことを話してくれた。