佐藤さんは甘くないっ!

医務室の電気は消えていても、カーテン越しに差し込む光が温かかった。

そしてわたしの身体に回された腕から伝わる熱も、同じように優しかった。

緊張で固くなった心までゆるりと解いてくれる気がした。


「……わたしも、話したいことがあります」


意を決して紡いだ言葉は少し震えていた。

佐藤さんが話してくれたのだから、今度はわたしが話して…それから謝る番だ。

わたしだって佐藤さんのことをたくさん傷付けてしまった。

…それも、最も酷い形で。


「最上さんに会ったとき……わたしは要らないとか、自分が本当の彼女だとか、色々言われました。もう整理ができなくて、頭が追い付かなくて……とりあえず佐藤さんの家を飛び出して、ずぶ濡れになって、駅まで走りました」


あの寒さを思い出すだけで震えてしまう。

突然降り出した雨はとても冷たくて、身体だけでなく心も冷え切ってしまっていた。

そんなわたしを見付けてくれたのが……三神くんだった。


「……偶然なんですけど、三神くんが駅にいて……今にも消えそうだったわたしの腕を、掴んでくれたんです。心細くてしょうがなくて、誰かに助けて欲しくて、どこにも居場所がなくて……」
< 230 / 291 >

この作品をシェア

pagetop