佐藤さんは甘くないっ!
医務室の電気は消えていても、カーテン越しに差し込む光が温かかった。
そしてわたしの身体に回された腕から伝わる熱も、同じように優しかった。
緊張で固くなった心までゆるりと解いてくれる気がした。
「……わたしも、話したいことがあります」
意を決して紡いだ言葉は少し震えていた。
佐藤さんが話してくれたのだから、今度はわたしが話して…それから謝る番だ。
わたしだって佐藤さんのことをたくさん傷付けてしまった。
…それも、最も酷い形で。
「最上さんに会ったとき……わたしは要らないとか、自分が本当の彼女だとか、色々言われました。もう整理ができなくて、頭が追い付かなくて……とりあえず佐藤さんの家を飛び出して、ずぶ濡れになって、駅まで走りました」
あの寒さを思い出すだけで震えてしまう。
突然降り出した雨はとても冷たくて、身体だけでなく心も冷え切ってしまっていた。
そんなわたしを見付けてくれたのが……三神くんだった。
「……偶然なんですけど、三神くんが駅にいて……今にも消えそうだったわたしの腕を、掴んでくれたんです。心細くてしょうがなくて、誰かに助けて欲しくて、どこにも居場所がなくて……」