佐藤さんは甘くないっ!

詰られることを恐れた。

蔑まれることを恐れた。

嫌われることを恐れた。


佐藤さんだって最上さんがいるくせに。

そう思ったから、三神くんのことを完全に拒めなかった。

最初から最後までわたしは佐藤さんのことを嫌いになんかなれなかったのに。

歓迎会の日にあったことを話した時、佐藤さんはわたしを咎めなかった。

三神くんのことをあんなに警戒していたくせに、あのときばかりは一言も責めなかった。

なのにわたしは、許してくれた佐藤さんを裏切ってしまった。

弱っていたとはいえ三神くんの家に泊まり、同じベッドで眠り、映画を観て恋人のように過ごし、美味しいご飯を食べて笑い合った。

その間も佐藤さんは急にいなくなったわたしを心配して、苦しい思いをしていたのに。

わたしは一体……何をしていたんだろう。


「ごめんなさい……さとう、さん、ごめんっ、なさ……」


あのとき、わたしは逃げたんだ。

ずっと待っていてくれたかもしれない佐藤さんを置いて、走って逃げた。

自分だけが助かりたくて、関係ない三神くんまで置いて行った。

誰も救えなかった。

自分を守ることしか考えていなかった。

最低だ。

ただの弱虫で、卑怯で、自分のことしか考えられない。


……そんなわたしを、三神くんも佐藤さんも、どうして見捨ててくれないんだろう。
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