佐藤さんは甘くないっ!

さすがに学習したわたしは言葉を飲み込んで、ごめんなさいと上目がちに答える。

少し機嫌を直した佐藤さんはまたごろんと横に転がって、わたしの髪をくるくると弄んだ。


「柴を泣かせるなって言われた。あいつに言われてどうしようもなく腹が立った。大体、なんでお前は柴が泣いていたことを知ってるんだと言ってやりたかった」


子供が駄々をこねて拗ねるように、その語気には幼さが滲んでいる。

三神くんがそんなメールを送っていたなんて初耳だし、挑発しているように見えて、案に自分のところにいるから心配するなと、言ってくれているような気がする。

とても驚いているんだけど、それ以上に佐藤さんが可愛い。

どうしよう、どうもできないけど、どうしよう可愛い。

もだもだしてしまいそうな気持ちを必死で抑えつつ、頑張って真面目っぽい顔を作った。

ああもう、好き、好き。



「………好き」



…………?

えっと、今の、わたしが言った?

自分の口が発した言葉なのに信じられなかった。

告白はもっとムードのあるときにしようって思ってたのに。

少なくとも、医務室の簡素なベッドに寝転がって言うことじゃない。

なんで今言っちゃったんだろう…!

恥ずかしくなって目が合わせられずにいると、音を立ててベッドが軋んだ。

ぎしり、逃げられない予感。
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