佐藤さんは甘くないっ!

目の前には優しい顔をした佐藤さん。

恥ずかしくて消えてしまいたいわたしの身体を、甘い眼差しがベッドに縫い付ける。

なんて言い訳をしたら良いか解らずもごもごしていると、クイッと顎を掬われて佐藤さんと目が合ってしまった。

顔から火が出そうなくらい頬が熱い。


「…柴、もう一度」

「え、いや、あの、今のは、」

「なぁ……聞かせて」


こんなときに甘くて掠れた声を出すなんてずるい。

耳元から鳥肌が立ってしまいそうだ。

ぞわりと言い様のない感情が背中を這いあがる。

熱っぽい色の灯った瞳が真っ直ぐに、わたしだけを見つめていた。

…何回だって言いたい。

ずっと言いたかった。

最上さんと比べたくもない。

ずっと、ずっと、わたしは、


「……佐藤さんが、好き」

「………名前」

「えっ」

「名前で呼べよ」


きゅうっと心臓が苦しくなる。

あの甘い毒で再び肺が満たされる。

身体が震えて、熱くなって、呼吸が苦しくなって。

このまま死んじゃうんじゃないかってくらい、どきどきして。

痺れるような毒がもっともっと、欲しくなって。




「―――馨さん、大好き」

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