佐藤さんは甘くないっ!
…どうしてそんな顔、するんですか。
だけど咽喉が張り付いてそれは言葉にならなかった。
ごくりと唾液を飲み下しても状況は変わらない。
「………どうして合コンなんか、」
耳を疑うようなキーワードが聞こえてきたことでわたしの思考は完全に停止した。
合コン?
合コンって言ったこのひと?
どうしよう…全くもって意味が解らない。
も、もしかして合コンに行くにも上司の許可が必要だったのだろうか。
…ってなに言ってるんだ、そんなバカな、有り得ない。
それとも残業させるつもりだったのに予定いれてんじゃねーよってことだろうか。
日曜なのでその心配はないのですけど…。
でもとりあえず、なんとなく、佐藤さんが合コンをお気に召さなかったことだけは解った。
なにか嫌な思い出でもあるのかしら…でもそれわたしに関係ないような…。
部下の身を案じてくれている…?
いやいや佐藤さんはわたしの父親じゃあるまいし。
ぐるぐるとひとりで迷走していると、佐藤さんが重たそうに口を開いた。
「…柴は誰でも良いのか」
…………………な、なんの、お話でしょうか?
脈絡が無さ過ぎてその短い言葉の意味を汲み取ることができなかった。
どうしよう今日の佐藤さん意味解んない…。
普通に話せば良いのにわざわざこんな…こんな…所謂壁ドンみたいなことまで、しなくても。
少女マンガでしか見たことがなかったから、まさかわたしが誰かにされる日がくるなんて思いもしなかったけど。
その相手が佐藤さんというのは笑うべきところだろうか。
それとも二度とない経験だと喜ぶべきだろうか。
………べつに、嫌では、ない、けど。
「(…って、なにわたしは血迷ったようなことを…!)」
自分自身を殴り付けて再起不能にしてやりたい衝動に駆られた。