佐藤さんは甘くないっ!

佐藤さんの所為でわたしまでおかしくなってきた。

思考がうまく働かない。

さっき「誰でも良いのか」って言われたけど、合コンと絡めて考えると……もしかして…男の話?

それでわたし怒られてるのかな?

きちんと相手を見て選べってこと?

いやだから佐藤さんはわたしの父親じゃ…。


「合コンなんて行くな。ろくな男はいない」


わたしの読みは当たっていたようだった。

普段は冷淡な佐藤さんの切れ長の瞳に、妙な熱が灯っている。

……返答に、詰まった。

そんなこと上司の佐藤さんに言われる筋合いはないと言ってやりたい気持ちがぶくぶくと湧き上がる。

しかしそれを打ち消すように、さっきの佐藤さんの何とも言えない表情が浮かんできた。


あの表情は……なんだったんですか。

どうしてあんな顔で、わたしのことを見つめたんですか。

まるで、わたしのこと―――


そこまで考えてはっとした。

自意識過剰に決まってる、どうしてそんなことを思い付いたのか。

恥ずかしい、図々しいにも程がある。

佐藤さんが横暴で傍若無人で自分勝手で俺様なことは今に始まったことじゃない。

これも、きっと、例外なくその性格に起因しているんだ。

すみません、承知しました、っておとなしく聞き流せば済むことなのに。


なのに、なんで、


「……別に…男を漁りに行くわけじゃないです」


どうしてわたしは、佐藤さんに変な誤解をされたくないって思ったんだろう。
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