佐藤さんは甘くないっ!
そんな風に金曜日の仕事も終わり、馨さんとお好み焼きを食べに行った。
意外にも馨さんはコテを使うのが上手くて、正直わたしより綺麗に焼き上げていて悔しかった。
そのあと、何を思ったのか馨さんの提案でラーメンまではしごしてしまって、わたしの胃袋ははちきれそうだった。
お腹いっぱいになってうとうとしてしまうわたしを、子どもだなと馨さんが馬鹿にする。
助手席に座るのはなんだか久しぶりな感じがして、革張りのシートから伝わる振動すら懐かしく思えた。
そして、使うのは三度目のカードキー。
因みに最上さんが持っていたスペアキーは返してもらったらしい。
向こうから言いだしてきたことらしく、少しだけ最上さんに近付けたような気がした。
「……郁巳、おいで」
お決まりのクラシックをBGMに、馨さんの低くて甘い声がわたしを誘惑する。
まだお風呂にも入っていないし……そもそもスーツのままなのに。
馨さんはネクタイを放り投げると、わたしの腕を掴んでそっとソファに押し倒した。
角度を変えて、舌を絡ませて、馨さんの唇とわたしの唇が重なる。
重なる、から貪る、に変わった頃にはお互いの頬が赤く染まり、息が荒くなっていた。
馨さんの骨ばった手がいやらしくわたしの身体を這う。
あの日の医務室の出来事を思い出してしまい、下腹部の奥がじわじわと熱をもつ。
馨さんは色気を含んだ溜息を吐き、愁いを帯びた瞳でわたしを見つめた。
「郁巳、可愛い……好きだ、愛してる」
甘ったるい愛の囁きと共に、身体のあちこちにキスの雨が降る。
耳たぶ、首筋、鎖骨、二の腕…。
じれったさで思わず身を捩ると、馨さんが嬉しそうに含み笑いを零した。