佐藤さんは甘くないっ!
しかし、自分が一番わかっている。
好きになった時間も、場所も、タイミングも、関係ないんだってことを。
解っているからこそ……つらい。
「三神は良いやつだからさ、いつか柴ちゃんみたいな良い子にまた出会えるよ」
さっきから度数の強い日本酒ばかり飲んでいるくせに、顔色一つ変えずに俺のことを気遣ってくれている宇佐野さんはどこからどう見ても大人の男だ。
羨ましい。
ああもう、どいつもこいつも羨望の対象でしかない。
柴ちゃんみたいな良い子、という表現がまた胸に刺さる。
……ここまで好きになっているとは正直、自分でもびっくりだった。
確かに柴先輩のいる会社に就職したかったし、佐藤さんの元で働いてみたかった。
だけど、実際に会ったら2年越しだし、あー再会できたわーくらいのものだと思ってたのに。
たった2年なのに、綺麗になっていた。
髪が短くなっていた。
化粧が薄くなっていた。
男っ気は、相変わらずなかった。
そこに安心した自分がいて、ああまだ好きなんだと気付かされた。
柴先輩はやっぱり危機感に欠けていて、自分が女だという自覚があまりない。
そんなところも好きだった。
いつでも屈託なく笑っていて、ころころ変わる表情が可愛いと思った。
先輩だけど良い意味で先輩っぽくなくて、だけど仕事の場面では頼りがいのある上司だった。
柴先輩は気にしてたみたいだけど、俺は柴先輩を馬鹿にしたことなんてないし、いつだって目標だった。
自分はまだまだって思っているみたいだったけど、柴先輩の同期とは比べものにならないくらい仕事が早い。
さすが、佐藤さんが直々に育てただけあるなぁとムカつくけど感心してしまった。
だからそんな環境で働けるのは、本当に夢みたいだった。