佐藤さんは甘くないっ!

……だけど、一緒に過ごせば過ごすほど、敵わないんだと思い知らされる。

佐藤さんの背中しか見ていない柴先輩。

そんな柴先輩の前をいつも堂々と歩く佐藤さん。

ていうか佐藤さん、なんであんな仕事できるんだろ。

俺だってそれなりに頑張ってるけど、2年であのひとに追い付けるんだろうか。

どうしてあそこまで頑張れるんだろう。

そんなことをずっと思っていた。


「……ぜんぶ、しばせんぱいのためだったんだなぁ…」

「馨さ、昔から仕事できたけど、柴ちゃんに会ってからさらに進化したんだよね」


思い出し笑いをして歯を見せる宇佐野さんは楽しそうだ。

俺は笑えない。

……愛が原動力って、あの顔で良く言うよ。


「ぞっこんってこういうことなんだなーって、びっくりした」

「……いわれなくても……しってますよ」


ビールが苦い。苦すぎる。

ああもう。

泣きたくなんかない。


「まぁでも、最上が帰ってきたときは焦ったね。僕も知らなかったし」

「……あのさとうさんにかのじょがいたなんて、びっくりしましたよ」

「あはは、棘があるねぇ。まー……最上が押して押してなんとかって感じではあったけど」


あの日は偶然、大型ホームセンターに用があって佐藤さんの家の最寄駅を使った。

柴先輩はまた佐藤さんの家にお泊りなのかな…なんて考えてた。

だって柴先輩解りやすいし。

すぐ赤くなるし、思い出してるときとかすごく可愛い顔するし。

……佐藤さんのためでもなんでも良いから、笑っていて欲しかったのに。
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