佐藤さんは甘くないっ!
最上が馨のことを好きになるのは時間の問題だと思った。
なんたって最高のビジネスパートナー。
おまけに見た目の上では美男美女なんだから、好きにならない理由なんてきっとなかったんだろう。
二人が付き合い始めたのは、同期として四年近く過ごしたときだった。
皆それぞれ地位も高くなってきて、気付けば部下を抱える身になっていた。
馨は恋愛なんてどうでも良さそうだった。
だけど、仕事の上では最上のことをとても気に入っていたから、告白されて押されまくれば、まぁいいかと頷いていた。
ビジネスパートナーを失いたくない気持ちもあったんだと思う。
僕はそれを眺めて、いつ破綻するんだろうな、と酷いことを考えていた。
「(…………だって馨、全然楽しそうじゃないし)」
僕は馨とよく飲みに行ったし、二人でいるときは馨の表情も柔らかかった。
満面の笑みなんか見たことないけど、それでも口の端を少しだけ持ち上げて微笑を浮かべることは何度もあった。
だけど最上と付き合い始めてから馨と飲みに行く頻度も減り、表情はますます硬くなっていった。
仕事をこなす面では全く変化はなかったけど、それでもやっぱり違うことに気付いてしまう。
たぶん僕だけが、妙な違和感の中で仕事をしていたんだ。