佐藤さんは甘くないっ!
…まだ自分の理解が現実に追いついていない感じがする。
昨日の夜に繋ぎ止められたままのようだった。
冷めかけているパスタをもごもごと口に運びながら、昨日のお昼もパスタだったなと今更思い出す。
あのときはまさか、佐藤さんと……恥ずかしいから考えるのをやめよう。
しかし逃避したくてもそんなこと、あの鬼上司が許してくれるわけがない。
“帰ってきたら返事を聞かせて欲しい”
出張のタイミングが悪すぎるって、最初は思ったけど。
だけどひとりで考える期間ができてほっとしたような…かえって焦るような…。
きちんと向き合いたいのに臆病なわたしが邪魔をする。
はぁ、と思った以上に大きな溜息が零れた。
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―――
未だに信じられないけど、昨日、あの佐藤さんに告白をされた。
「柴、お前が好きだ。結婚を前提に付き合って欲しい」
何度も何度もその言葉が良い声でリピートされる。
なにこれ?
リアルすぎる夢?
びっくりしすぎて二の句が継げないわたしを見て佐藤さんは小さく笑った。
……二年振りに見た微笑もまた、破壊力は抜群だった。
冷静な思考などすっかりどこかに落としてきてしまったわたしはただ、固まる。
本当に夢のような出来すぎた状況に、もしかして…と一抹の不安が過る。
愚かにもわたしの第一声は心の声が無意識に露呈したものだった。
「………な、なにかの罰ゲームでしょうか」
「はぁ?殺すぞ」
さっきまでの可愛い表情から一変。
間髪入れずに呪いの言葉を吐き、ぎろりと般若のような顔で睨み付ける佐藤さんにこれは現実なんだと思い知らされる。
これが罰ゲームでもドッキリでもなんでもなくて、ただの……告白なんだとも。