佐藤さんは甘くないっ!

ぼふっと顔に熱が集まって、耳まで赤くなるのを感じた。

あの佐藤さんに!

あの佐藤さんに!

こんな平凡なわたしが!

……こ、こ、こくはっ……!!!

完全に自分の許容範囲を超えた出来事に脳みそが爆発しそうだった。


「……まず告白をするつもりが…お前の泣き顔見たらつい…その……我慢が、できなくて」


視線を逸らしてもごもごと言葉を濁す佐藤さんを見てまた顔が熱くなる。

ど、どうして、平気でそういうことを言うんですか……!!

こっちは今にも心臓が止まりそうなくらいどきどきしてるのに……!


甘酸っぱい気持ちに支配されて自分が自分じゃないようだった。

何か言わなきゃと思うのに、何を言えば良いのか解らない。

告白をされたことは本当に嬉しくて今にも舞い上がってしまいたいくらいなのに。

だけど相手は2年間ずっと追いかけていた上司の佐藤さんで。

どうしてわたしなんかを好きになってくれたんだろうって、余計な不安が付きまとって。

だったら素直にそう聞けばいいのに、勇気が出てこなくて。

そんなわたしを見て佐藤さんはなにを思ったのか、眉を僅かに下げて苦しそうな顔をした。


「……上司に突然言い寄られて驚いただろ、悪い……迷惑だったな」


ずきんと胸が針で刺されたように痛む。

……また、その、顔。

もどかしさと切なさが入り混じったような…見ているこっちが辛くなる表情。

普段はこっちが引くほど強気で自分勝手なくせに…なんでこんなときだけ…。

ああもう……佐藤さんはやっぱりずるい。

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