佐藤さんは甘くないっ!

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お昼ご飯を済ませてオフィスに戻ると、細いたれ目が特徴の部長がわたしの元に歩み寄ってきた。

なにか悪い話かと一瞬思ったが部長の表情を見るとそんなに深刻そうでもない。


「柴くん柴くん!君にお願いがあってね」


お願い?

きょとんと首を傾げていると、部長がわたしに向かって手招きをした。

……正確には、わたしの後ろにいるひとに対して。


「三神くん!こっちだよ」


部長の言葉に振り返ると、背後に長身の男の人が立っていた。

真ん丸で人懐っこそうな瞳が印象的。

動物に例えるなら大型犬のようで、優しそうな雰囲気を醸し出していた。

因みに佐藤さんは狼というか蛇というか、とりあえずそこらへんを混ぜた感じだ。

それはもう動物じゃない気がしたけどこの際放っておく。


「柴くん、紹介するね。三神糺(みかみれい)くんだよ!うちの会社のホープでね、各部署の研修に回ってもらっているんだ。それで今日からうちの部署に配属されて、3ヶ月一緒に働くことになったんだよ」

「初めまして、三神です。柴先輩、今日からお世話になります」


三神くんが深々と綺麗なお辞儀でわたしに頭を下げた。

……お世話になるってどういうこと?

この部署で、っていう意味……だよね…?

訳が解らず困惑していると、部長がお決まりの爆弾を投下してきた。


「柴くんにはこれから三神くんの面倒を見て欲しいんだよね!」


………わ、わたしに直属の後輩!?

確かに今年の新入社員はわたしの実質的な後輩ではあったけど、宇佐野さんを始めとする他の先輩方が彼らの担当についたため、わたしは今まで通り佐藤さんの元で働いていた。

……じゃあ佐藤さんの部下を外れるってこと…なの…?

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