佐藤さんは甘くないっ!
そんなことを言われてしまったら、もう首を縦に振る他なかった。
自分がどこまで出来るか解らないけど頑張ってみたい。
三神くんにも佐藤さんにもたくさん迷惑を掛けてしまうかもしれないけど。
それでも逃げたくはなかった。
せっかくわたしにことを認めて任せてくれようとしているのに。
ここで断ったら負けだ、と直感的に思った。
「三神くん、わたしは柴郁巳です。今日からよろしくお願いします!」
「はい!早く仕事を覚えてサポートさせて頂きたいです。3ヶ月間よろしくお願い致します!」
元気よく返事をする三神くんにつられてわたしも明るい気持ちになる。
部長はそれ以上何も言わず、嬉しそうに去って行った。
木曜日まで佐藤さんがいないということは、鬼のような仕事がやってこないということでもある。
今のうちに三神くんに仕事を覚えてもらえたらお互いがとても楽だ。
さっそくソフトを起動して簡単にデータ入力を教えてみると、驚くべき速度で習得していく。
三神くんがホープだという現実を突き付けられてあらためて感動した。
うちの部署の新入社員が5日の期限で与えられた課題を三神くんは数時間でこなしてしまう。
佐藤さんが入社したときもこんな風だったのかな、と想像して思わず微笑んだ。
きっとこんなに素直じゃないから、先輩も大変だったろうなぁなんて。
「柴先輩、今日はありがとうございました!」
「お疲れさま。三神くんは飲み込みが早いから教えるのも楽だよ。明日からもよろしくね」
定時に上がれるなんて奇跡かもしれない。
オフィスのエントランスまで三神くんと一緒に並んで歩いた。
道中ですれ違うOLがちらちらと視線を送ってくることに気付き、瞬時にその意味を理解する。
三神くんは色んな意味で佐藤さんと似ているかもしれない。
……系統はちょっと、違うけど。