佐藤さんは甘くないっ!

どこまで方向が一緒なのかと思いきや、なんと使っている路線まで同じだった。

三神くんはわたしより一駅早く降りる。

今まで通勤中に三神くんを見た覚えはないけれど、これから見かけることもあるだろうか。

会社の最寄駅までぷらぷらと歩きながら話題を探す。

だけど初対面の男の人と何を話したら良いのか解らず結局黙ってしまった。


「(年齢はわたしの二つ下で、今年入ったホープってことしか知らないや…)」


顔立ちは宇佐野さんに似ていて所謂甘いフェイスというやつだった。

大きくてぱっちりした瞳は常に優しさで溢れている。

三神くんが怒ることなんてあるのかな、と思ってしまうくらい。

身長はすらりと高くて、がたいは良い方ではなくひょろっとした印象を受ける。


「三神くん、モテるでしょう」


口に出してからはっとした。

…しまった…今時はこんな質問もセクハラだパワハラだって言われちゃう…。

なんでもないよごめんね、と訂正するより早く、三神くんが小さく笑った。


「柴先輩って嘘とか吐けなさそうですよね」


にこりと笑った顔に黒い影はみられない。

ただ純粋におかしかったらしい、肩を震わせて彼は笑っている。

もしかして笑い上戸なのかな…?


「へ、変なこと言ってごめんなさい!」

「どうして謝るんですか?」

「いや…セクハラになるかなって…」

「あはは!そんな器の小さい男じゃないですよ」


会社にいたときより柔らかい表情を見せる三神くんはかっこよくて、さらに可愛かった。

そりゃあOLが興味深そうに見つめるわけだよね…。

顔が良くて仕事のできる男をまた生み出してしまうなんてやっぱり神様は不公平だなぁ。

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