佐藤さんは甘くないっ!

律香はつまらなさそうにふーんと唇を尖らせた。

鬼畜シュガー……もとい佐藤さんの話を突いて面白くなるはずがないと思うけど…。


「柴さー彼氏作らないの?」

「……なに、いきなり」

「あんた可愛いのに勿体ないなーって」

「……………お世辞どうも」


そういう律香は美人さんでいつもきらきらしている。

性格はとてもさばさばしていて付き合いやすく、一途で情に厚い。

もちろん寄ってくる男も多く、いつも何かしら恋の話を咲かせていた。


「彼氏が欲しい気持ちはあるんだよね?」

「そりゃあね……でも就職した直後に別れたきりだし」

「あー、すれ違いだっけ」

「遠距離とか無理だと思ったしね、お互い好きだったけど」


ぬるくなったココアをスプーンで意味もなくかき混ぜる。

忘れられるわけがないと思っていた元彼への未練も、この2年間忙殺されていたお陰ですっかり消えていた。


佐藤さんの元で働くのは正直過酷で、だけど同時に大きなやりがいもある。

わたしは気付けば佐藤さんの秘書のようなポジションに就いていた。

今後増えるであろう出張にも同行を余儀なくされることが想像できる。

でも今は仕事が何より楽しかった。

憧れの会社で、仕事はできる上司の元で働くことで充実感を得ることができた。


だから恋人がいないことをそこまで嘆いてはいなかった、けど。

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