佐藤さんは甘くないっ!
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元はと言えば、佐藤さんがやはり大人げないのが原因だと思う。
あのひとに備わっている感性は仕事においては抜群の効果を発揮するけど、日常生活を送るうえで支障にしかならないだろう。
まずもって、わたしたちの別れはあの夜なわけで。
……こ……告白されたりしちゃった、あの日。
ちょっと会うの気まずいなーみたいな気持ちで今日は出社したというのに。
「……柴、遅い。しかも俺の着信を無視するとは良い度胸だな」
「さ、佐藤さん!?」
今日の昼ぐらいに到着って部長から伺っていましたけど!?
困惑するわたしをよそに、佐藤さんはなぜかぶち切れ不機嫌モード全開だ。
この不機嫌さは、先月わたしが転んで佐藤さんの大事な手書きメモに熱々のコーヒーをぶちまけてしまったときに匹敵する。
……つまり相当お怒りだということである。
しかし至っていつも通りの鬼畜シュガーっぷりにどこか安堵する自分もいた。
「お言葉ですが……着信、ですか?」
「……お前は起きてからから一度もケータイを見ていないのか」
呆れながら腕を組む佐藤さんの声音はさっきより少しだけ穏やかだ。
慌てて今朝ポケットに突っこんだままのケータイを確認すると、ディスプレイには着信1件の文字。
あちゃー……と痛む頭を押えながらタップするとやはり“佐藤馨”の名前が。
目を見張ったわたしの真意は、着信に気付かなかったことへの驚きだけではなかった。
なぜならこの2年間、佐藤さんから電話がかかってきたことなど一度もなかったからだ。
「申し訳ありません!なにか急ぎの用事ですよね?佐藤さんがわざわざ電話するなんて……」
しかし驚いたのも束の間、事の重大さに青褪めるばかりだった。
どうして昨日気付かなかったんだろう……!
時間を確認すると着信があったのは本当に眠りにつく寸前だったようだ。
そういえば視界の端で何かがちかちかしていたような……。