佐藤さんは甘くないっ!
週末には、前々から律香と約束していた我が家での宅呑みが控えていた。
土曜日の夕方から呑み始め、そのまま泊まって日曜日をだらだらと過ごし、月曜日は一緒に出勤する予定だ。
律香も一人暮らしをしているがわたしの家の方が会社に近いため、我が家での開催に至った。
酒豪である律香のために缶ビールは事前にケース買いをしておいた。
お酒の種類はビール、日本酒、ワイン、カクテルなどなど。
わたしは結構な甘党でビールも2缶ぐらいまでしか美味しく呑めないが、律香はちゃんぽん上等でなんでもがばがばと呑んでしまう。
ケースも2日あればすっかり空になってしまうから恐ろしい。
普段から呑むのでカクテルを作る準備はできているが、辛いお酒は好きじゃないので、そういったものは律香が自前で用意する。
肴はウインナーやチーズ、サラダやパスタなど。
できるものはわたしが簡単に作ったが、最近の出来合いは美味しいものが多くてとても助かる。
わたしはそこまで料理が得意ではないので……これ以上は黙っておくけど。
そして何よりの肴は……避けては通れない、あの話だ。
「……あ、あのさ、律香!」
「んー?なあにー」
開始から1時間程が経った頃。
全く酔ってはいないが顔がほんのり赤い律香の傍らには、空になった缶がいくつも転がっている。
自他ともに認める正真正銘のザルである。
わたしは気まずいような恥ずかしいような気持ちをずっと抱えていたため、正直あまりお酒が進んでいなかった。
……ああ、心臓がきりきりする…。
しかし律香に隠し通すことなどできないことをわたしは理解しているので腹を括るしかない。
……でも…どんな反応をされるんだろう…あんなに言ってたくせに、ってさすがに軽蔑されたりして…。
いやまず、その前に。
意を決して口を僅かに開きかけた瞬間。
「柴、もしかして彼氏できた?」
……どこまでも鋭い友人に、完敗の白旗を心の中で掲げた。