佐藤さんは甘くないっ!

自分勝手な胸の痛みに自己嫌悪が溢れ出す。

ああ、ごめんなさい、佐藤さん、そんな顔しないで。

苦く切ない気持ちが肺腑を満たして呼吸がうまくできなくなる。


だけどまだ、全部じゃない。

ここからが、わたしの勝負。


「で、でも!」


力みすぎて思った以上に大きな声が出てしまった。

声にびっくりしたのと相俟って、佐藤さんが疑念を浮かべた表情でわたしを見つめる。

端整な顔にじっと見られていることが恥ずかしくて、意思とは無関係に熱が生み出されてしまう。

頬が触ってもいないのに熱いと解る。

口の中がからからに渇いて苦しい。

こんな気持ちになるのは久しぶりで自分がよく解らない。

でもきっと、佐藤さんが相手だから……わたしはこう思ったんだ。


「さ、佐藤さんのこと、もっと知りたいんです!すごく我儘で身勝手だと思います。だけど、あの……これからは仕事じゃないときも、一緒にいたいって……えっと…うまく言えないんですけどっ…」


しどろもどろになりながらも、なんとか自分の想いを形にすることができた。

緊張から手だけでなく足まで震えてくる。

まるでわたしが告白をしたような気分だ。

佐藤さんの反応が怖くて俯いていると、空気の動く気配がした。


「………なんだよ、それ」


溜息と共に吐き出された言葉が鋭くわたしを抉る。

……で、ですよね……応えられないとか言っておいて…どこまで都合良いんだって…話ですよね…。

ああ、言わなければ良かったのかな。

視界がぼやける。

涙がじわじわと滲むのが解る。

やめて、泣かないで、やめてよ。

これ以上わたしを嫌な女にさせないでよ。

…佐藤さんに嫌われたくないよ。



「どこが身勝手なんだよ、ばーか」

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