佐藤さんは甘くないっ!
美味しいご飯があるとついついお酒が進んでしまう。
佐藤さんは飲めないのでわたしも自粛しようとしたが、気にせず好きなだけ飲めと言われてしまった。
申し訳なかったので今日はカクテルを4杯に留めておいた。
……人並み以上に飲んでるよ、って律香に言われそうだけど。
しかし緊張していた所為か、いつもより圧倒的に少ない量で少し酔ったような心地がする。
佐藤さんはそんなわたしに「今度、潰れるまで飲み比べだな」と言って微笑んだ。
どんなに飲んだとしても佐藤さんが酔い潰れる気はしないけどなぁ。
心の片隅で、仕事では敵わないから呑み比べくらい勝ちたいな、などと妙なプライドが顔を覗かせた。
デザートプレートまで美味しく頂いたところでお手洗いに立った。
久しぶりに立ち上がるとくらり、一瞬の甘美な眩暈。
気分が高揚するような酔い方は気持ちが良い。
上機嫌のまま歩き出すが、さすがに真っ直ぐ歩けなくてふらふらするようなことはなかった。
お手洗いを済ませて口紅を直し終わると、すっかりほろ酔いも醒めてしまった。
鏡に映った自分の頬は赤く、気の所為かいつもより大人っぽく見える。
理由はなんとなくわかっていた……どう考えても、今日のわたしはおとなしい。
「(…なんていうか、わたしたち、本当のカップルみたいなんだよね…)」
緊張するなって言う方が無理だ。
だって佐藤さんと二人でお喋りしながら食事の時点でどっきどきなのに、こんな、わたし好みのお店を選んでくれたなんて。
そんなの……嬉しいに決まってる。
はああああ、となんとも言えない感情の混ざった深い溜息が零れた。
再び、恨めし気な表情で鏡に映る自分の姿を確認する。
やっぱり頬が赤い。それになんか、…弛んでる。