ただキミが欲しかった
もう号泣だった。
あたし以外にも、すすり泣いている子がいる。
シーンとした空気の中、場違いな採点の音が流れた。
77点
あたしは思わず、笑ってしまった。
「あはは!早崎、歌微妙!なのに泣けるし!しかもラッキーセブン来たし!」
すると周りもあたしにつられるように笑い始める。
「採点の音、超空気読めてないね!」
「香奈なりのKYだね!!」
「はー!?私空気読めるもん!てかKYとか時代古っ」
「ちょ、空気なんかぶち壊されてるよーー」
「しかたない。採点の音が悪い!優子もちょっと音程ヤバい!」
早崎は恥ずかしそうにあたしを肘でどつく。
「早崎、ありがと」
涙でぐっちゃぐちゃの顔だけど、自然に早崎に向かって笑う事が出来た。
「恥ずかしいわ!」
「歌微妙な早崎が悪い~~。てかシンだっけ?すっごいいいね!!」
「シン、私も普通に好きーーーー!」
「シンすっごいカッコよくない!?」
「歌うまいし、ルックスもタイプの違う5人がいて満点だし、言うことなし!」
「あれ、みんなシン好きなの?」
「私そこそこにならー!」「あたしもそこそこにならー!」「以下同様!」
「早崎はー?」
「私、この曲以外知らないんだよねー」
「え、早崎!この曲マイナーだよ!メジャーのでももっといいのいっぱいあるよ!!」
「なんか勇気づけられる感じのが多いから、奈々美も聞いてみなよ!ハマるよ!」
「え、なら聞いてみる!」
そして、また一通り盛り上がってお開きとなった。