ただキミが欲しかった
「いやー、これから遊びに行くって話してたら、坂木くんが俺も行くってなって。で、たまたま坂木くんと一緒にいた藍原さんも誘ったの!」
ズキン、と心臓が嫌な音を立てる。
「……なんで坂木と藍原さんが一緒にいたの?」
「……あー、俺ら、先生に呼び出しくらったんだよ。な、藍原?」
「………う、うん」
この二人の会話で、心がガラガラと崩れていった気がした。
今あたしに芽生えた感情は。
悲しみではなく怒りだった。
すっと早崎の背中から前へ出る。
「ちょ、奈々美!」
「……早崎、大丈夫だから」
早崎に視線を送り、そのまま真央に映す。
整っている容姿に真っ直ぐな瞳。
その瞳に映るのはあたしだけだと思っていたのに。
違ったんだね。
「……な、奈々美?何で……泣いてんだ?」
ポロリ、一粒涙が頬を伝った。