黄昏に香る音色 2
プロローグ
「ったく!いやになるぅ!」

カウンターに肘をついて、毒づいてしまう。

まだ学生服のままの、少女は、出されたオレンジジュースのストローをくわえた。

「仕方がないわよ。いつまでも、上には、いられないからね」

カウンターの中で、グラスを洗いながら、女は、上を見た。

「あたしだけ、ずっと上に、住んだら、だめかな?おばさんから、ママに言ってよ」
洗い終わったグラスを、棚に並べながら、女は、溜息をつく。

「無理だと、思うわよ。折角、日本に帰ってきて…やっと、親子3人で、暮らせるんだから…」

不満げな様子に、女は肩をすくめ、

「それに…あたしが、そんなこと言ったら…なんて言われるか、わからないわ」

女は、身を震わせた。

少女の母親と妹は、2年前からずっと、アメリカへ、仕事の都合で、渡米していた。

1人、日本に残ることを主張し、母親の友達と、

おばあちゃんの店であった、この場所に、2人で住んでいた。

少女の名前は、速水香里奈。

高校2年生。




店の名は、KK(ダブルケイ)。


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