黄昏に香る音色 2
一人きりの部室。

里緒菜は、台本を見つめていた。

これでいくと、決めていたけど、

里緒菜は、悩んでいた。

この物語の終わりを。

ハッピーエンドのはずだった。

でも、今は、

悩んでいる。

ハッピーエンドにして、いいのか。

主人公を演じるのは、里緒菜と直樹。

物語の主人公は、ハッピーエンドに終わっていた。

この前、直樹と二人で台詞を合わした時、

自分が書いた、物語の意味を知った。

(あたしは、劇を隠れ蓑にしている。)

この物語は…。




部室の扉が、開いた。

「今日は、休みと言ったはずだけどな」

入ってきた女は、腕を組んで、里緒菜を睨んだ。

「部長…」

演劇部部長-中谷美奈子は、里緒菜に近づき、

「台本を、変えたいんだって?…公演は、来週だぜ」

「わかってます。だから、変更は結末だけです」

里緒菜は、目をそらした。

そんな里緒菜の姿を見て、美奈子は、ため息をついた。

「やれやれ…何があったか、知らないけどさ」

美奈子は、里緒菜から台本を取り上げる。

「一度完結させた物語は、変わらないぜ。例え、最後だけ変えたとしても」

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