黄昏に香る音色 2
美奈子は、台本をめくり、

「よく出来てると思うぞ。エンディングに向かって、相手への思いが溢れてる。それなのに…」

美奈子は、台本を里緒菜に返した。

「最後だけ、無理やり変えたら、おかしくなる。主人公のそれまでの行動…気持ちさえもな」

「何とかまとめます」

里緒菜の言葉に、美奈子は頭を抱えた。

「かあ~!何とか…まとめる!何をだ、如月!」

「ストーリーを…」

「違うだろ!」

美奈子が叫んだ。

思わず、里緒菜は美奈子の顔を見た。

「ストーリーじゃない!お前の気持ちだろ」

はっとする里緒菜。

美奈子を見て、すぐに視線を外した。


「ったく!」

頭をかきながら、美奈子は扉に歩きだす。

「台本は、このままでいく。お前ができないんだったら、誰かに、代役をさせるからな!いいな」

里緒菜は、俯いたままだ。

「どっちにしても、今のお前じゃ…エンディングを変えたとしても、演技なんてできないよ」

美奈子は、部室を出ていった。

また一人になった里緒菜は、

ただ台本を見つめることしか、できなかった。
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