黄昏に香る音色 2
「はあ~」

香里奈は、深くため息を落とす。

薄情にも、恵美と祥子は先に消えてしまった。

「帰りましょうか」

直樹の笑顔は、嫌じゃなかった。

素直で、まっすぐで、香里奈に何も求めていない。

だから、ただ…。

それに…ここは、学校から駅までの帰り道。

行き交う生徒の視線が、痛い。

祥子が言っていたけど、直樹は女子に人気がある。

(香里奈ちゃんが告白されたことは、くれぐれも内緒にした方がいいよ…。)

と、言われたけど…。

「速水さん」

向こうがこうも、大々的にアピールしてきたら、

「無理…」

香里奈は肩を落として、呟いた。

祥子の言葉は続いた。

(香里奈ちゃんも、お母さんが有名だから…目立ってるし…)

(だから…飯田くんも他の男の子に、妬まれ…)

(ないかあ…どうしてだろ)



思い出したら、腹が立ってきた。

「は、速水さん…」

直樹の声で、香里奈は現実にもどった。

周りを見ると、

他の生徒たちがじろじろと、二人を見ていた。

香里奈は、恥ずかしくなって、

思わず直樹の腕を取ると、全力で走り出した。

「は、速水さあん!」

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