黄昏に香る音色 2
「ちょっとママ!待ってよ」

香里奈は、急いで後を追う。

里美も、仕方なく歩きだす。

直樹は、大きく息をはいた。

やっと、緊張感から解放された。

明日香は振り返り、

「飯田さんも、うちに来る?」

「いえ、今からバイトがありますので…ご遠慮させて頂きます。本当にすいません」

丁寧に謝る直樹に、明日香は、

「そんなに、かしこまらなくていいのよ」

明日香の気さくに、直樹は少し驚いていた。

世界的な歌手なのに。

「はい!」

直樹は、元気よく返事した。

「バイト頑張って」

明日香の微笑みに頭を下げ、直樹は走り出す。

里美にも頭を下げ、

香里奈に、

「また明日。お休みなさい」

そして、もう一度、明日香に頭を下げると、駅の方に走っていく。

「飯田くん!」

香里奈が叫んだ。

直樹は足を止め、

振り返った。

「ありがとう」

香里奈の言葉に、直樹は頷いた。

また頭を下げると、走り出した。

「お休みなさーい!」

香里奈は、直樹の後ろ姿に手を振った。

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