黄昏に香る音色 2
ダブルケイの店の前に、

和恵が立っていた。

和恵は、明日香と香里奈に気づき、大きく手を振り、近づいてくる。

「ママ、お姉ちゃん!」

「和恵!」

香里奈は、大きく手を広げ、飛び込んできた和恵を抱き締めた。

そんな2人の娘の様子を、やさしく見守る明日香。

「明日香…啓介さんが生きてるって、どういうことなの?」

里美は、明日香に食い下がる。

「どういうこと?説明してよ」

明日香は、視線を娘たちから外し、

里美を見た。

「あたしも…わからないわ」

明日香の悲しそうな瞳の色に、

里美は、口をつぐんだ。

「ママ!」

元気よく、明日香に手を振る和恵に、

明日香は、笑顔で振り返す。

和恵と香里奈は、店の中に入っていった。

「ただ…言えることは…」

明日香は、ダブルケイの扉を見つめ、

「あの人は…あたしたちの知ってるあの人とは、違うということよ」

明日香は、里美に悲しげに微笑んだ。

「明日香…」

明日香は、ダブルケイに向かって歩きだした。





< 121 / 539 >

この作品をシェア

pagetop