黄昏に香る音色 2
いきなりな話だった。

しかし、

驚かなかった。

松木大輔には、予感があった。

志乃から、しばらく活動をアメリカに移すと告げられた時も、驚かず、

やっと始まるのかと、心が踊った。

志乃のバックについてから、どれくらい経ったか…。

もう七年近い。

もうすぐ20歳になる歌姫が、中学校の頃からついている。

出会いは…チーフの店だった。

ダブルケイ…。

懐かしい響きだ。

かつて、存在した日本最強…

いや、世界最強だと自負していたバンド。

LikeLoveYou。

大輔は、そのメンバーだった。

まだ高校生だった大輔を、ギターリストとして見いだしたのは、啓介だった。


初心者だった大輔の才能が、見込まれたのだ。

そして、

忙しい啓介がいないとき、バンドをまとめ、大輔を育てたのが、

3つ上の明日香だった。

バンドは、世界中を飛び回った。

アメリカ、フランス、ブラジル…

東欧の治安の悪い国々も。

危ない目にもあったが、楽しかった。

大学進学もやめて、ギターリストとして、何年も旅した。

たまに帰ってくる日本。

ダブルケイで、

志乃に出会った。



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