黄昏に香る音色 2
才能がある子だとは思ったが、

一緒にやるとは、思わなかった。

俺には、LikeLoveYouがあるから。

永遠にこのバンドで…

明日香と一緒に。


大輔は、明日香に淡い恋心を抱いていた。

啓介という憧れ尊敬するアーティストと結婚していて、子供がいても、関係なかった。

思うことは自由だった。

明日香と啓介のバックでギターを弾きながら、

大輔は、ミュージシャンとしても満足していた。

しかし、

大輔の思いは、断ち切られることになる。

啓介の死によって。



大輔は、バンド活動を続けることを主張した。

明日香さえいれば。

啓介のスペースは、ギターで埋める自信もあった。

しかし、

明日香は、首を縦に振らなかった。

他のメンバーも、解散を望んでなかった。

啓介の浮気も、発覚していた。

「今やめたら、ダメだ」

大輔の言葉を受けて、

明日香は、やさしく微笑んだ。

「そうね…大ちゃんの言う通りね」

それは、とても悲しい微笑みだった。

明日香はそのまま…

バンドを脱退した。

明日香と啓介のいない…

LikeLoveYou。

バンドだけが残っていた。
< 123 / 539 >

この作品をシェア

pagetop