黄昏に香る音色 2
やはり世界にでたい。

世界中で、認められたい。

大輔たちは、志乃とともにアメリカに旅立った。

早くも何ヶ月か前に、

時祭グループがアメリカで、チェーン展開している店舗や、テレビスポットで、志乃の曲は流れていた。

頻繁に。

アメリカの地を踏み、しばらく歩いていると、どこからか流れてくるぐらいだ。

アルバムのレコーディング、ライブの予定の前に、

志乃は、行きたい場所があると言った。




今、志乃と大輔たちは、その目的地の前にいた。

それは異様な光景だった。

ある建物の前に、テントやプレハブ小屋が並び、

人々は、その建物にすがりつき、耳をつけ、

中の音を聴こうと、群がっていた。

虚ろな目、汚れた服。

人々はただ…中の音だけを求めていた。

道に寝ころんだ者。

ただ宙を見つめている者。

群集を押しのけるように、志乃たちは進む。

建物の扉を開ける。

黒ずくめの男が、志乃を見て、口笛を吹くと、チケット代をせがむ。

志乃は人数分払うと、奥に進んだ。

奥の扉から、音が漏れてくる。

大輔はその瞬間、

震えた。


(何だ?この音は…)

震える体を抑えていると、

志乃は、扉を開けた。



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