黄昏に香る音色 2
大輔たちに、衝撃が走った。

立ってるのがやっとだ。

音が刺激する。

会場内に、一体感なんてない。

失禁してる者。

喘いでいる者。

何かを、狂ったように振り回している者。

泣き叫ぶ者、やってる…者。

共通点は、狂っていることだけだ。

ステージ上では、バンドメンバーも泣き叫び、演奏なんてしていない。

ただ一人…

だけが、サックスを吹いていた。

志乃は、ワナワナと全身を震わせ、ステージを睨んでいた。

「啓介」

大輔は驚きから、後ずさる。


「そ、そんな…馬鹿な」

一旦、扉を開け、会場から出た大輔は、激しく息をした。

「あれは…」

信じられないものを見て、大輔は、全身に汗をかいていた。

「そんなはずはない…」

腕で汗を拭っていると、

「あるわよ」

誰かが、大輔に話しかけた。

大輔は、声の方を見た。

歩いて近づいてくる女。

「久しぶりね」

すぐには、大輔はわからなかった。

「覚えてない?」



大輔は、大きく目を見開いた。

「馬鹿な…なぜここに…この国にいる!」

大輔は叫んだ。

「なぜって…」

女は笑った。

「国がなくなったからよ」
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