黄昏に香る音色 2
「元気にしてた?最後にあったのは…7年前かしら」

「ティア・アートウッド…」

LikeLoveYouがライブの為、訪れた東欧の国。

今はない国で、ティアと出会っていた。

音楽が、盛んでなかったその国で、いろいろ世話になった人だ。

「なぜここに?」

大輔の問いに、せせら笑うティア。

「国が、なくなったって言ったはずよ」

「確かに国は…名前が変わったが、あるはずだ」

「確かにあるわ…でも、もう知ってる者はいない…」

ティアは体を震わせ、

「あれは…違う国よ。愛する人が誰もいない…」

「誰も?」

「音楽のせいよ…」

「音楽…」

「弾圧されたのよ。あなたたちのような音楽を、聴いてたから…資本主義の音楽なんて…聴いていたから!」

ティアは、大輔に近づく。

「限られた娯楽しか、許されなかった私たちに…あなたたちは、数多くの情報を送りつけてきた。一方的に!」

ティアの瞳は真っ直ぐに、大輔を見つめる。

「その一つが音楽だった…あたしたちは、熱中したわ。この国にない自由なものを、感じたから…」


「あなたたちは、知ってるかしら?あなたたちが、何気なく聴いている音楽が…地下で、革命のテーマになったり、生きる力になっていたことを…」


< 127 / 539 >

この作品をシェア

pagetop