黄昏に香る音色 2
「あたしたちは、音楽を聴き、明日への希望を抱くようになった…」

ティアの表情が変わる。

「それを、国は許さなかった!その思いが、いつ革命や暴動に、つながるかわからない…」

「危惧した国は…音楽を聴く人間を、徹底的に取り締まり、罰を与えた」

ティアは天を仰ぎ、

「誰も助けてなんて、くれなかったわ。みんな捕まり、酷い拷問を受けた」

「そんな話は知らない…」

大輔が呟いた。

ティアは大輔を睨み、

「そうよ!あなたたちはそうなの!自分たちで、勝手に情報を流し、自由や楽しさ…良いところだけを見せておいて!その結果なんて気にしない」

「あたしたちがどうなろと、気にもしないわ」

ティアは大笑いした。

涙を流しながら…。



「大輔さん!」

扉がいきなり開き、会場の中から、鋭い声が飛んだ。

サックスの音で埋めつくされた空間を、一瞬で切り裂いた。

「その女と何話してるか、わからないけど…あたしたちの目的は、あいつよ」

志乃の声で、はっとした大輔は、会場に入り、ステージを見た。

「そんな女、無視して…行くわよ」

志乃は、ステージに向かう。
大輔たちも慌てて、後を追う。

チラッと、ティアを見た。

ティアは、ニヤッと笑みを浮かべていた。



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