黄昏に香る音色 2
涙が、

里緒菜の目から流れた。

「ずるいんだよ…あたし…」

直樹は、ゆっくりと首を横に振った。

里緒菜は苦笑し、

「ずるいよ…うそばっかり」

里緒菜は、少し歩き出した。

直樹に背を向けて。

「でも、これじゃ…だめなの…」

「香里奈も、ナオくんも大切だから…」

里緒菜は振り返り、直樹を見、

全身を直樹の方に向けた。


「あたし…」

里緒菜は、満面の笑顔を見せた。

せいいっぱいの笑顔。

かなわない願い。




「あたし、ナオくんのことが好きです」

里緒菜は、心からそう思っていた。

あなたが好きと。

ただそれだけ。
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