黄昏に香る音色 2
もう日が、沈みかけていた。

今日最後の輝き…夕焼けがきれいだ。

墓地は、誰もいなかった。

明日香は、墓に手を合わせる。

「ママは多分、知ってたわね…啓介のこと…」

香里奈も手を合わせる。

「あなたの息子が…生きてたってことを」

明日香の言葉に、香里奈は驚いたが、

衝撃はなかった。

やっぱり…

生きていた。

でも、

明日香の口から、直接きくと、重みがあった。

明日香は振り返り、香里奈の方を向いた。

「香里奈…あなたのお父さんは、生きています」

強い風が吹いた。

「例え…それがどんな形であっても」

明日香はそう言うと、

また恵子の墓に、視線を落とした。

香里奈は理解していた。

生きていたことは、うれしい。

しかし、それはあまり喜ばしい状況じゃないことを。




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