黄昏に香る音色 2
「あなたは知ってるか…わからないけど…今、アメリカの音楽界で、問題が発生しているの」

「問題…?」

明日香は頷き、

「音のドラッグーといわれる音源が、ネットで配信され…数多くの事件が、発生している」

「音の…ドラッグ…麻薬?」

「最初は、そんなもの…噂だけのものだと思っていたは…みんなね」

夕陽が落ちていく。

「でも…あるライブで異変が起きた…。ライブ中、観客の何人かが暴れだしたの」

香里奈は黙って、きいている。

「死傷者もでたわ。それは、あるバンドが演奏している時に起こった」

明日香の体を、夕焼けが赤く染めている。

沈む前の一番の輝き。

明日香は、香里奈を見つめた。

「そのバンドの名は…KK…ダブルケイよ」

「ダブルケイ…」

香里奈は呟いた。

「そのバンドが演奏すると、必ず死傷者がでるから…会場を貸さないところも、でてきたけど…見たいという人々の数は、増え続けているの」

明日香は、恵子の墓の方に向いた。

「ママ…あたし。啓介を止めに行きます。ダブルケイは、ママと健司さんたちのもの…」

明日香の脳裏に、思い出がフラッシュバックする。

「それを汚すなんて…あたしは、許せない」

そう言う明日香の横顔を、香里奈は、ただ見つめていた。
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