黄昏に香る音色 2
「速水さあん」

昼休みになると、必ず屋上で、ランチするのが当然になっていた。

香里奈、恵美、祥子、

直樹に、和也。

そして、里緒菜がいた。

演劇の発表は、明日だった。

もう準備は、すべて用意できていた。

楽しそうに、話すみんなから離れ、

里緒菜は、手摺りから、景色を眺めていた。

「どうしたんだ?如月」

そんな里緒菜に気づき、和也がそばに来た。

「別に…何でもないわ」

和也は、里緒菜の横顔を確認して、

「吹っ切れたみたい…だな」

和也も視線を変え、景色を眺める。

里緒菜は、少し驚いたように、和也の横顔を見た。

少し微笑むと、

「ええ」

明るく返事をした。

「あのさ…お前にききたいんだけど…」

「何?」

里緒菜がきいた。

「お前と俺は、近いから…きくけど…俺の魅力って、何だと思う?」

「魅力?」

「モデルをやってるからか…それとも、親戚に金持ちがいるからか…」

里緒菜は首を捻り、

「モデルは有名だけど…親戚のことは、知らないんじゃないの…あたしと違って」

「全面に出してなくても…今…俺が、のほほんと、余裕を持っていられるのは…そういうのが、バックボーンとして、あるからじゃないんだろうかってな」


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