黄昏に香る音色 2
音に愛されたもの
店を閉めて、病院まで付き添った里美。

意識を失っている志乃は、治療を終え、

今は、ベットに横たわっていた。

身寄りがない志乃。

里美は医者に呼ばれ、診察室にいた。

身元引受人は、里美となっていたからだ。

医者は、ディスクから振り返り、厳しい表情を向けながら、

「過労です。体が衰弱していますが…何日か休んだら、体力は回復するでしょう」

里美は、ほっと胸を撫で下ろした。

しかし、医者の厳しい表情は、変わらない。

「ただし…」

「ただし…?」

里美が聞き返した。

医者は視線をそらし、

ディスクに向かった。

「先生…」

医者は、レントゲン写真を見つめ、

「声帯が、ボロボロになっています。あまりにも、激しく、酷使し続けたからでしょう…これはひどいです」

「先生…どういう意味です…」

「治りますが…もう以前のように、歌うことはできません。普通の会話程度は、支障はないでしょうが…」


「先生!何とかならないのですか!」

里美が叫んだ。

「この子は、歌手なんです!」

医者は、首を横に振り、

「ここまで…声帯がボロボロでは…どうしょうもないです」



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