黄昏に香る音色 2
ドアの前に、亜希子はいた。

「わざわざすいません!」

香里奈は駆け寄る。

「久しぶりね。香里奈ちゃん」

亜希子は、笑顔で迎えた。

「あたしが、店に入らなくなって…もう7年くらいになるかしら」

「あたしがまだ…小学生でしたから…」

亜希子は、啓介の母−恵子の妹だった。

一時期、ダブルケイを手伝っていたが、

歳が歳なゆえに、7年前に引退していた。

今は、家庭で家事に専念している。

「たまに来て、掃除はしてるんだけど…」

香里奈は、鍵を受け取った。

ドアを開け、中に入る。

記憶の中と、まったく様子は変わっていなかった。

家の中を、懐かしそうに見渡す香里奈の横顔を、

亜希子は見つめ、

「詳しいことはわからないけど…香里奈ちゃん…気をつけてね」

香里奈は頷いた。

「大丈夫です!何とかなります」

亜希子も、家の中を見回した。

居間にあるソファ。

あそこに座っていた姉である恵子と、

まだ小さかった啓介。

そして、

啓介と明日香。

小さい香里奈。


香里奈が、振り返る。

「おばさん」

亜希子は、はっとした。

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