黄昏に香る音色 2
振り返った香里奈は、今の香里奈だった。

「本当にありがとうございました」

亜希子はフッと笑い…その後、微笑んだ。

「いいのよ。香里奈ちゃん」

亜希子の視線の向こうに、何枚かのCDがあった。

「ここに入れば、あなたのおばちゃんたちが、守ってくれるわ」

亜希子は、CDラックに近づき、二枚のCDを取り出した。

「よければ、これ…聴いてあげて」

香里奈に差し出した。

「これは…?」

「あなたのおばちゃんたちのアルバムよ」

「おばちゃんたち…」

香里奈には、二人のおばちゃんがいた。

二人とも会ったことはないが、明日香からきいていた。

速水恵子と、

安藤理恵。

どちらも歌手だった。

渡された二枚は、

恵子のダブルケイと、

安藤理恵のLet Me Love Meだった。




二人の歌手。

亜希子が帰った後、

香里奈はそっと、CDをかけることにした。

二人の女が歌う物語を。


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