黄昏に香る音色 2
受話器を置き、

ティアは妖しく微笑んだ。

その様子を横で見ていたジャックは、腕を組ながら、

「…で、どうなったんだ?」

「さあ…来るんじゃないの」

ティアは笑いながら、テーブルに置いてあったワイングラスを、手に取った。

ティアたちは、ホテルの一室にいた。

高級ホテルではないが、

大輔が手配してくれた。

レコード会社はまだ、戸惑っており、

KKを認めていなかった。

しかし、

来日したKKを見て、レコード会社の重役の一人は、息を飲んだ。

「速水さん…」

KKは、その言葉に反応を示さず、重役の前を素通りした。

昔からいる一部のレコード会社の社員は、速水啓介を知っており、

それが、志乃のいなくなったバンドを、何とか認めている理由だった。




ティアは、グラスに口をつけた。

「来ても来なくても、いいの」

ティアは、ジャックを見た。

「KKの音があればね」

ティアは窓のカーテンを開け、

そこから見える街並みを眺めた。

夜だというのに、女性が一人でも歩ける街。

ティアは鼻を鳴らし、

「何て気楽な国…」

安全が当たり前の国。

それが、

当然の国。

「吐き気がするわ」

ティアは、カーテンを閉めた。
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